本研究は、生物学的概念としての「人種」の有効性が否定されてから久しいにもかかわらず、21世紀に入っても人種がかくも強固に社会的に存在するのはなぜかという問題を究明するものとして出発した。 そのような人種の社会における実在性、すなわち社会的リアリティを理解する手がかりは、人種の表象と表現にあると本研究では考え、表象と表現に関する分野横断的、地域横断的なアプロ-チを試みた。 その際、近年の欧米の研究動向を参照し、表象の現実歪曲性よりも、表象の産出されるプロセスに関心を注いできた。また他方、マイノリティの側がステレオタイプ的な表象を解体すべく主体的に人種の表現を取るという戦略にも注目し、新しい抵抗運動の可能性を探った。
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