本研究の主たる成果は、平成20年度中に刊行した、木村琢麿『ガバナンスの法理論』(勁草書房)および同『港湾の法理論と実際』(成山堂書店)であり、平成21年度には、これらの研究書を発展きせ、あるいは肉づけする作業を行った。すなわち、(1)まず、行政法の基礎理論については、フランスの公私協働論の全体像を示すという観点から、論文「フランスにおける公私協働論の潮流」を公表した。これは、前掲書『ガバナンスの法理論』のうち、とりわけ第2章~第4章の問題意識を発展させた内容である。(2)また、著書『プラクティス行政法』(信山社)においては、行政法の基礎理論との関係から、現代的なガバナンス論ないし財政法・公物法的な観点の重要性を明らかにしている。(3)他方、各論的な考察対象である港湾行政に関しては、論文「法的観点からみた港湾の現代的課題」において、わが国の法制度上港湾管理の問題点を分析したうえで、今後の方向性を提示した。これは、前掲書『港湾の法理論と実際』のうち、とりわけ第2編第1章の発展的内容であり、実務的には、国際戦略港湾等の諸制度を構築するに当たっての理論的基礎(港湾管理と港湾経営の区分など)を提供している。(4)さらに、学会報告としては、日本公法学会において、「財政統制-その限界と新たな可能性」と題する報告を行った。これは、本研究の総括としての位置づけをもつものであり、その内容は、公法研究75号に掲載予定である。(5)このほか、日本財政法学会においては、企画委員として、「会計検査院」をテーマとした研究大会の運営に携わった。また、連携研究者である大塚成男は、本研究の一環として、同学会の学会誌『国公有財産の管理(財政法叢書26)』(2010年、全国会計職員協会)に、昨年度の学会報告「財務会計を通じた公有財産の評価と管理」を公表している。
|