研究課題/領域番号 |
18203005
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 輝之 名古屋大学, 大学院法学研究科, 教授 (00182634)
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研究分担者 |
町野 朔 上智大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60053691)
岩瀬 徹 上智大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80384155)
中谷 陽二 筑波大学, 人間総合科学研究科, 教授 (30164221)
小西 聖子 武蔵野大学, 人間関係学部, 教授 (30251557)
辻 伸行 上智大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60137809)
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キーワード | 心神喪失者等医療観察法 / 責任能力 / 精神保健福祉法 / 地域精神医療 / リスクアセスメント / 治療反応性 / 鑑定入院 / 情報の保護 |
研究概要 |
1.本研究は、精神医療関係者と法学研究者との完全な共同研究によって、(1)心神喪失者等医療観察法の理念と構造とを検討し、(2)本法の施行状況のモニタリング調査を実施し、本法施行後5年後の見直しに向けて、(3)本法における法理論的問題点とその運用における問題点について、具体的でかつ実現可能な提言を行うことを目的とするものである。 この目的を達成するため、本年度は、研究代表者、分担研究者、研究協力者による、研究会を6回開催し、講師を招いて、同法における法理論的、実務的問題を検討した。特に、プライヴァシーへの慎重な配慮のもとに、法律家、医師、コメディカル、行政・司法関係者を交えて行った事例研究は、同法における運用上の問題点を抽出するために非常に有意義なものであった。また、琉球病院を訪問・視察し、同法の施行状況と、離島という状況における同法の問題点を探った。 2.現在、心神喪失者等医療観察法の運用において、最も重要な問題の1つと考えられるのが、対象者のリスク評価の問題である。本年度は、特にこの点について、責任能力とリンクしない保安処分システムを有し、リスク評価を基礎とした触法精神障害者の処遇を行っているスイスの法制度について、比較法的調査・検討を行った。 (1)まず、その一環として、スイス・チューリッヒ州の訪問調査を行った。この調査では、同州の司法精神病院、一般精神医療、行刑担当部局、刑務所、裁判所等を訪問し、担当者との意見交換を行った。その結果、同州法務局において、非常に詳細なリスクアセスメントツールである「FOTRES」を開発し、それによって、極めて精緻なリスク評価を行い、触法精神障害者の処遇決定を行っていることが明らかになった。 (2)そこで、この「FOTRES」について、より詳細な調査・検討を行うため、このシステムを開発した、チューリッヒ州法務局の関係者を沖縄に招いて、国際シンポジウムを開催し、「FOTRES」の内容などについて、彼らと直接質疑応答を行った。その結果、「FOTRES」システムは、多様な項目を詳細に評価し、対象者の構造的要素だけでなく、その可変的要素と治療による介入可能性を対象とする点で、わが国の鑑定ガイドラインに取り入れられた「共通評価項目」と類似の構造を有していることが明らかになった。 (3)「FOTRES」の内容の分析・検討および「共通評価項目」との比較法的考察などは、次年度においても継続的に行う予定であり、これらの検討を通じて、研究の最終年度には、リスク評価を処遇の基礎とすることの原理的な問題、リスクアセスメントの方法、ツールなどについて、わが国の精神医療および法制度において受け入れ可能な提言を行う予定である。
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