研究概要 |
趙:今年度は、「iPodサイクル」のモデル分析を行い,先進国の企業家たちによってイノベーションとアウトソーシングへの努力が同時に実行されることを示した。イノベーションが成功すれば,先進国の企業家たちは直ちに生産を製造コストが低い途上国の国々にシフトさせる。ビジネスウィーク誌はこうした企業を「スピード狂(speed demon)」(March27, 2006, pp.70-76)と呼んだが,彼らはしばしば新しいR&Dをアウトソーシングと途上国における大量生産に直結させ,潜在的なレントを引き出そうとする。技術的改善,諸政策,模倣,知的所有権保護などがこうしたアウトソーシング,イノベーション,あるいは賃金にいかに影響するかについても議論している。 菊地:(1)独占的競争市場を組み込んだ動学的国際貿易モデルの拡張と、(2)重複世代を組み込み、各国間の時間選好率格差に焦点を当てた動学的貿易モデルの構築を主として行った。(1)に関しては、動学的な意味でのヘクシャー=オリーン定理を再確認した。(2)に関しては、貿易収支のインバランスを時間選好率格差から説明できることを明らかにした。 土居:主として国際的労働移動によって受け入れ国にどのような影響が及ぼされるのか、について、世代重複モデルを構築して議論を行った。国際間の資本移動を考慮煮入れた場合には、賃金による影響のみが現れるだけであるが、資本移動を考慮しない場合には、通時的に、資本蓄積量、公共資本量も変化するため、異なる世代、異なるskillを持つ人に異なる影響を及ぼすことが明らかになった。 胡:主に動学的一般均衡モデルを用いて、国際貿易と経済成長に関する国際間の貿易パターン、または各国内の市場部門と非市場部門(家庭内生産)の間の資源配分問題を中心に長期及び短期の動学的分析を行った。時間選好率が内生的に決まるケースも考慮に入れて、それより動学貿易モデルにおける内生変数に与える影響を分析した。 上東:時間選好率の異なる2国からなる資本移動の一般均衡モデルを構築した。標準モデルと異なり大国経済を想定し、それぞれの国が利子率へ影響力があると仮定した。均衡を分析し、定常点の存在および安定性を明らかにした。
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