研究概要 |
本研究計画は、近代的な、すなわち匿名的な取引が支配的な市場経済を成り立たせる取引統治の制度がどのように形成され、そして、それとともに企業組織や生産組織がどのように発達するのかを、実証的、理論的に解明することを目的としている。研究代表者および連携研究者は分担部分の研究を推し進めると共に、大阪大学大学院経済学研究科において毎月開催された「制度と祖織の経済学」研究会においてその中間成果を共有した。そうした蓄積を踏まえ、最終年度である平成21年度には、まず第一に、日本学術振興会「国際研究会議」としての資金補助を得て東京大学社会科学研究所において8月に「制度と組織の経済学」東京会議を開催し、第二に、同じく8月にオランダのユトレヒト大学にて開催された第15回国際経済史会議におけるセッション"J7-states, institutions, and development : Standardization and enforcement of trades in diverse markets"、そして第三に、9月に東洋大学にて開催された第78回社会経済史学会全国大会パネルディスカッション「制度と組織、そして市場-外なる差異の裁定と内なる差異の創出」を祖織するという特筆すべき成果を上げた。「東京会議」では理論に重点を起きつつ、本計画の成果について徹底した討議を行い、国際経済史会議では、本計画の経済史研究者と、本計画が過年度において日本に招聘した海外の第一線の経済史研究者とが改めて問題意識を詰め直し、その成果を3年に1度開催される、経済史学界最大の国際会議における独立セッションとして報告した。社会経済史学会では若手連携研究者による市場と組織の相互作用に関する実証分析の成果発表に重点が当てられた。いずれも、市場を成り立たせる取引統治の制度と、企業組織や生産組織との相互作用を重要な問題関心を共通として持ちつつ、理論的な考察と実証的な分析の往復から創造的な知見を提供することに努めた。
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