子ども期を含め人の一生のなかで出現する多くの精神疾患や問題行動にはその発現要因として環境ストレスが深く関与しており、個体側の持つ素因的脆弱性(vulnerability)との交互作用によってそれぞれの発現危険性が増減する。とくに入園や入学、就職などの発達的移行期(developmental transition)には新しい環境への再適応が必要とされ、不適応的行動発現のリスク期と位置付けられる。本研究では、乳児期から成人前期に至るまでの各発達移行期-乳幼児期における家庭から保育所・幼稚園等の保育集団への移行、児童期から青年期における小学校・中学校・高等学校・大学への入学、青年期から成人前期における職業世界への移行-について各発達移行期を網羅する複数のコーホートサンプルを追跡し、同一の発達精神病理学(developmental psychopathology)的な測定・分析パラダイムによって検討することにより、各移行期での環境要因と不適応発現の因果関係を同定し、リスクをより健やかな発達につなげるためにはどのような条件が必要なのかを子ども期全体を通じて明らかにすることを目的としておこなわれている。 平成19年度は、(1)I.乳幼児期コーホート(本研究終了年に小学校1年生となる4歳半児)の追跡調査(誕生時より経年4回目の追跡調査で、全サンプル対象の郵送による質問紙調査)および(2)II.小学生期コーホート:本研究終了前年および当該年に中学校2〜3年生となる小学4〜5年生III.中学生期コーホート:本研究終了前年および当該年に高校2〜3年生となる中学2〜3年生)、IV.高校生期コーホート:本研究終了前年および当該年に大学進学あるいは就職する高校2〜3年生)を対象とした2年間隔5回目の追跡調査を完了した(コーホートII、III、IVは一卵性および二卵性の双生児サンプルである)。
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