研究課題
本研究では、乳児期から成人前期に至るまでの各発達移行期について各発達移行期を網羅する複数のコーホートサンプルを追跡し、同一の発達精神病理学(developmental psychopathology)的な測定・分析パラダイムによって検討することにより、各移行期での環境要因と不適応発現の因果関係を同定し、リスクをより健やかな発達につなげるためにはどのような条件が必要なのかを子ども期全体を通じて明らかにすることを目的としておこなわれている。平成21年度は、(1)I.乳幼児期コーホート(0歳・2歳・3歳・4歳・5歳で経年調査を実施し、21年度に小学校1年生となった455名)の追跡調査および(2)小学生期~成人前期までの各コーホートについての2年間隔6回目の追跡調査を完了した。最終年度にあたり、期間中に収集したすべてのデータ(質問紙調査データ、家庭観察データ、課題観察データ、生活時間調査データ、構造化面接データ)の入力を完了して総合的な分析を開始し、その成果の発表をおこなった(日本心理学会第73回大会、第20回日本発達心理学会、第6回日本子ども学会)。主な成果として、(1)乳幼児期から成人前期に至るまでの基本的な心理機能(パーソナリティ・社会性)と問題行動の縦断的化および両者の関連性について遺伝的要因の関与を含めてその実態の一端を明らかにしたこと、(2)(1)を踏まえながら発達移行をスムーズに導く要因を分析し、多様な対身からのソーシャル・サポートとともに乳幼児期ではとりわけ養育者のケア・クオリティとそれを維持するための家庭内外のサポートや対人関係性の良好さが重要であること、児童期以降では子ども集団での活動を支える養育者・教師のサポートとともに子ども自身の自己調整力とその発達を促進可能な養育者の監督や統制的関わりが重要であること、青年期から成人期への移行については家族との愛着を基盤とした心理的自立が職業展望などに対して有効であることが明らかになった。
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Proceedings, Global COE Program (Science of Human Development for Restructuring the 'Gap-Widening Society") Ochanomizu University Vol. 9
ページ: 57-65
発達心理学研究 (印刷中)
Proceedings, Global COE Program (Science of Human Development for Restructuring the 'Gap-Widening Society") Ochanomizu University Vol. 5
ページ: 91-102
日本遺伝カウンセリング学会誌 29(2)
ページ: 63-68