研究課題
多理論統合モデルに従って開発した、ストレスマネジメント行動(1日20分間ストレスをコントロールするための健康的な活動を行うこと)を開始・定着させるためのエキスパート・システム(アセスメントに応じて処方箋を作成・送信するオンライン・システム)とワークブックを利用して、ストレスマネジメント行動変容介入を平成20年度から継続して行った。参加者をワークブックのみ受け取る対照群とさらにエキスパート・システムによる処方箋フィードバックを受け取る介入群に無作為に振り分けた。介入群はワークブックと処方箋フィードバック、対照群はワークブックを利用してセルフヘルプに取り組んだ。介入期間とフォローアップ期間は各々6ヶ月であった。この期間中、参加者は介入前、3ヶ月後、6ヶ月後、そして12ヶ月後にアセスメントを受けた。介入群の参加者には、介入前、3ヶ月後、そして6ヶ月後に処方箋フィードバックを送付された。ストレスマネジメント行動を実施している者の割合は、両群ともに、介入に伴い増加し、ストレスの自覚は緩和する傾向があった。しかしながら、フォローアップ後、ストレスマネジメント行動を実施する者の割合は維持されたものの、ストレスの自覚は介入前と同程度まで戻る傾向があった。これらの結果から、ワークブックを利用したストレスマネジメント行動変容の効果が示唆された。しかし、フォローアップによりその効果が維持されていないことから、フォローアップ後のセルフヘルプ学習の定着が課題として残された。また、処方箋フィードバックの有効性は明確には認められなかった。今回の試みは大多数を対象に個別最適化した介入の有効性を効果研究した点で画期的である。集団戦略におけるストレスマネジメント行動変容の限界と有用性をさらに明らかにする必要がある。
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