研究課題/領域番号 |
18203040
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
中村 満紀男 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (80000280)
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研究分担者 |
柳本 雄次 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (30114143)
安藤 隆男 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (20251861)
河合 康 上越教育大学, 学校教育学部, 准教授 (90224724)
岡 典子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (20315021)
佐々木 順二 聖徳大学, 人文学部, 講師 (20375447)
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キーワード | 特殊教育 / 特別支援教育 / インクルーシブ教育 / 専門性 |
研究概要 |
本研究は、特殊教育とインクルーシブ教育の創造的融合によって、特別支援教育を革新するための理念と基本的な制度設計を総合的に行うことを意図して開始された。本年度は、下記の項目に基づいて検討した。 1.特別支援教育制度の革新性およびその可能性と制約、2.学校教育の最終目的とそれを達成するための基本機能、3.特殊教育における教師教育の成果と問題等について、詳細た検討、または基本的デザイン設定を行った。 障害児教育の社会的位置め歴史的変化について、障害種別によって異なる経緯があったことを再確認したうえで、『障害科学は何か』においては、障害、特別支援教育が内包する理論的・実践的瑕疵を中心に、インクルーシブ教育との対照において検討した。この検討によって特別支援教育が特殊教育の単なる革新に終わるのか、インクルーシブ教育が提起しているような通常教育の変革をもたらすような制度になりうるのかが焦点になるが、現段階では、特別支援教育はその理念に基づいて制度が十分に練り上げられているとはいえず、特殊教育の革新として展開されていると評価できる。なにゆえに特別支援教育の可能性が十分に生かされていない状況になっているのかについての理由は、特別支援教育に関与する行政・研究・実践等の各レベルにおいて、インクルーシブ教育の理念が必ずしも正確に理解されていないこと、とりわけ特別支援教育が通常教育との緊張関係において構想・実行されていないこと、特別支援教育が、これまで軽視されてきた軽度発達障害に重点がおいていること、特殊教育の遺産継承が特別支援教育における新しい理念の整合において進められていないこと、特別支援教育の理念の実体化が障害種別によって差異があることが明らかにされた。以上の問題は、これまでの特殊教育学・障害児教育学の体質の反映でもある。すなわち、特別支援教育の可能性を開花させるには、理念・計画構想・実行の各段階において、特殊教育学・障害児教育の体質を改善し、体質の一因になっている断片的な輸入学的発想を克服することを考えなければならないということでもある。
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