研究概要 |
本研究は,ペレルマンによる幾何化予想の解決を前提に,本研究組織がカバーできる広範な分野を総動員し,3次元多様体上の幾何と不変量の理解を大域幾何(large scale geometry)の観点から深め,3次元多様体の世界の有機的結びつき記す鳥瞰図の作成を目指している.この目標は,19世紀半ばには素朴な意味でトポロジーが完全に知られていた曲面の世界が,実はその内部に豊かな構造を秘めており,今日,数学内外の諸分野と結びつき華やかな研究が展開されていることが手本にある. 研究を効果的に進める上で,各種関連情報の収集は重要であり,研究組織内の日常的な研究打ち合わせ,国外を含めた研究集会での成果発表,研究集会「トポロジーとコンピュータ」の開催,また関連研究集会の(参加者への旅費支給などの)開催援助を行った. 今年度はこれらの研究交流の下に研究組織として多くの成果を挙げたが,とくに研究代表者周辺では,有界幾何の仮定の下に,擬アノソフ写像のエントロピーと写像柱の体積の比が上から抑えられることを示し,前年度の結果と合わせて,本研究開始時の一つの目標であった「エントロピーと体積は比較可能で」あることを証明した.この成果と,金・高沢による最小エントロピーおよび最小体積に関する詳細な実験結果を,代表者が韓国のKIASで開催された研究集会で講演した.また代表者の修士課程の学生の茨木が,複雑度の低い曲面のトレイントラックグラフのトポロジーを完全に決定し,数理解析研究所で開催された研究集会で発表した.
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