研究概要 |
今年度は, 反応拡散系によるパターン形成や曲げエネルギーに駆動された曲線の運動に関する研究を中心に実施した. 高木はパターンの崩壊が起こる方程式系の構造を明らかにし, また平面閉曲線の曲げエネルギー汎函数の停留点を求めた. 長澤は, 平面閉曲線の曲げエネルギーの勾配流について研究を進め, 曲線の全長と面積を保存するという制約条件と非伸縮性条件と面積保存の制約条件の二種類の制約条件を含むより一般の勾配流方程式を導出した. 柳田は, 神経場のモデルとなる非局所方程式に関する研究を行い, 核関数のeffectivenessという概念を導入してフロント型進行波の速度を評価した. また, Gierer-Meinhardt方程式のシャドウ系に対し, 多重スパイク解の不安定性について調べた. 飯田は, 競争的な種間関係にある多種の個体群の挙動を記述する数理モデルに対し、異種間の対抗の激しさを表すパラメータを大きくする特異極限において多種の空間的棲み分けが起こることを、数学的に基礎付けた。一様な双安定反応拡散系においては, 正負両方の速度を持つ安定な進行フロント波解が存在することは良く知られている. 池田は, 拡散係数に非一様な摂動が与えられたとき, その影響が解のダイナミクスにどのように現れるかを中心多様体上の常微分方程式に縮約することによつて解析し, これまでに知られたよりも複雑な状況が起こることを突き止めた. 非一様性の強さをコントロールするパラメータを変化させると, 4つの状況 : (1)進行波の通過, (2)進行波の反射, (3)進行波の停止, (4)進行波の反射, が起こる. 反応拡散系と縮約方程式の解の対応付けを行い, 縮約方程式のにおいて, ホップ分岐, ホモクリニック分岐が起こり, それらが原因で上記の4つの状況が現れることを解析的に証明した.
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