研究概要 |
本年は,特に空間無限遠で減衰しない初期値に対するナヴィエ,ストークス方程式についての考察を進めた。 地球流体のような回転場の中の流体を記述するコリオリ力つきナヴィエ・ストークス方程式の数学解析は,回転場に対応する発展作用素が拡散型的ではなく,分散型であったため,通常のナヴィエ・ストークス方程式のようには扱えない。関数空間もヒルベルト空間的なものでないとうまく解析出来なかった。全空間の場合のエネルギー空間の議論が主であって,空間無限遠で減衰しない初期値についての解析は,分散型の評価により,回転が強ければ3次元であっても滑らかな解の大域存在が知られている。周期的な場合は,回転が大きいと2次元的な流れにより,大域解がやはり存在する。 本研究では,関数空間の取り方を様々に工夫することにより概周期関数を含む,空間無限遠で減衰しない初期値について,回転場が大きくとも一定期間の解の存在を示すことに成功した。また,半空間の場合の境界の接方向では減衰しない初期値についての解の局所存在も示せた。今後はどんな条件の下に大域解が存在するかを見ていきたい。 一方で本研究は,結晶成長現象の特異拡散についても考察した。本年度は非一様な場の中で,平らな面が折れて曲がっていく解のクラスを定式化し,実際にその様な解がただ一つ存在することを自由境界問題を解く様に示した。この方面で具体的に解が構成された初めての例である。このテーマに対して,通常の曲率流方程式のような等高面法の確立が求められているが,そのための準備として具体的な解が求まったことは重要である。
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