研究課題/領域番号 |
18204028
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
舛本 泰章 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (60111580)
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研究分担者 |
池沢 道男 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 講師 (30312797)
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キーワード | InP / 量子ドット / ハンレ効果 / 電子スピン / 核スピン / スピン緩和時間 / 超微細構造相互作用 / チャージチューナブル |
研究概要 |
チャージチューナブルInP量子ドットは、電気バイアスを-0.6Vにすると中性、-0.1Vにすると1電子がドープされ、+0.5Vにすると2電子がドープされる。準共鳴励起で、Hanle効果測定を行うと、1電子ドープされた時のみ円偏光レーザー励起に対し負の円偏光度をゼロ磁場で示す発光を示す。Hanle曲線は半値半幅1.54T、128mT、4.6mTの3ローレンツ成分の和で構成される。4.6mTの幅の最も鋭いローレンツ成分は負で、トリオン量子ビートが観測される同じバイアスで現れるから、ドープされた1電子のスピン緩和によるものと同定できる。4.6mTからgT^*_2=2.5nsが導かれ、InP量子ドットの電子のg-因子は1.5なのでドープ電子のスピン緩和時間はT^*_2=1.7nsと導かれる。この値は、超微細構造相互作用を通して、核スピン揺らぎが引き起こす電子スピン緩和として説明される。実際、核スピン揺らぎの有効磁場を円偏光度の縦磁場依存性から求めた値15mTが引き起こす電子スピン緩和として比較的良い一致を示した。128mTの幅のローレンツ成分は、1電子ドープに呼応して負になるので光励起電子・正孔対のスピンフリップによると同定されスピン緩和時間はT^*_2=51psと導かれる。最も広い1.54Tの幅のローレンツ成分は、1粒子正孔のスピン緩和と同定されスピン緩和時間はT^*_2=29psと導かれる。ドットの発光ピーク波長におけるHanle効果はドープ電子数を変えると劇的に変化する。2電子ドープの時には、Hanle曲線は正の2成分ローレンツ関数の和から構成される。この場合、最も低い電子の量子状態は終始、上向きスピン、下向きスピンの2電子で占められているので、正孔のスピン緩和を反映している。中性の時は、Hanle曲線は3成分ローレンツ関数(2つの正と1つの負)の和から構成される。
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