研究概要 |
GaAs/AlGaAs半導体2次元電子系および正孔系をベースとして作製した人工量子構造試料の低温強磁場における量子輸送現象の研究を進めた. (1)2次元正孔系の高次ランダウ準位において異方的伝導状態を見いだし,2次元電子系において見いだされているストライプ相との比較検討を行った. (2)アンチドット系におけるアハロノフ・ボーム振動の実験ではν=2付近においてサブ構造を見いだし,傾斜磁場下の実験によってそれがスピン分裂エッジ状態によるものであることを明らかにした. (3)2次元電子系の量子ホール領域における抵抗検出核磁気共鳴の実験を行い,特にν=1近傍において分散型の共鳴線形を見いだした.この分散型共鳴線形がν=1から遠ざかるか高温になるにつれて消失すること,ピークおよびディップにおける核スピン緩和時間が異なる振る舞いをすることなどを明らかにした.また,核スピン緩和時間がこの領域で通常のコリンガ型とは逆の温度依存性を示すことを見いだし,スカーミオン結晶との関係を議論した. (4)ゲート電極によって半楕円の境界を構成し,その2つの焦点位置にスプリットゲート量子ポイントコンタクトを配した試料を作製し,境界反射による電子集束現象を観測した. (5)超伝導ネットワークに磁性体アレイを配したハンブリッド構造試料を作製し,空間変調磁場下の超伝導ネットワークの相転移を電流電圧特性測定により詳しく調べた.その結果を2次元XY模型にフラストレーションが入ったFFXYモデルについての理論的予想と比較し,ドメイン境界におけるキンク対解離が相転移に重要な役割を果たしていることを示した.
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