研究概要 |
世界の研究動向によって実験装置の設計の変更を余儀なくされた。新たな装置の開発を行うため、平成18年度の実験計画を見直し、19年度に一部の経費(物品費16,000,000円)を繰越した。この繰越により「温度可変冷凍機冷却超伝導マグネットシステム」を購入し、実験準備を行い、平成19年度中に試行的実験を開始した。 この間、研究状況はさらに一変した。平成19年6月には磁場を印加せずして強力なTHz波が発生できることが我々のブループとアメリカ合衆国、アルゴンヌ国立研究所のWaiK. Kwok等のグループによって発見され、その研究に勢力を注いだ。試料は、高温超伝導体Bi_2Sr_2CaCu2O_<8+δ>の大型で良質な単結晶上にイオンエッチングの技術により形成された大型メサ構造であり、長さ約300-400μm,幅100,80,60,40μmの4種類で、厚さが1μmの試料であるり、現在、強力な電磁波の発振が確認されている。その全強度は概算値であるが、最大5μWを超えており、既にある種の応用に十分利用できるレベルにある。その周波数はそれぞれ凡そ357,480,648,890 GHzにあることが、その後の我々の分光実験により明らかにされた。発振されたTHz電磁波は極めて鋭いスペクトル特性を持ち、コヒーレントであり、基本波の他、高調波も観測され、強度は減少するが4次で2.5THzに達している。また、放射される電磁波は指向性を持っており、メサの面に垂直方向から30度程傾いた方向で極大を示す事が分かった。現在、発振機構として、交流ジョセフソン効果がすべての固有ジョセフソン接合でコヒーレントに同期し、試料自身が空洞共振器の役目を果たしていると考えられ、交流ジョセフソンレーザーが実現されたものと考えている。今後、このような強力な発振が起こる物理的な機構をより明確に解明し、より強力な発振を実現するための実験条件を確立する。
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