研究課題
平成20年度は本研究の主題であるジョセフソン磁束とテラヘルツ波の発振の関係を明らかにすることにとりわけ注力した。ゼロ磁場での強力なテラヘルツ波の発振が平成18年に発見されて以来、研究の方向をゼロ磁場にシフトしたため、現状では未だ解明されていない。ただし、ゼロ磁場であっても、発振の主要な原因として、内部に磁束線が侵入し、これを発振の主要な要因と考える説も有力説としてあり、磁場と発振の関係が明らかでない。ただし、実験的に静磁場を印可すると発振が抑制され、十分強い磁場下では発振は止まってしまうことがわかっている。ダイナミカルな磁束線状態として新しい磁束状態がテラヘルツの発振に決定的であるとする理論的主張がどの程度正しいか実験検証がほしい。一方、実験的に超伝導メサ内部でどのような現象が起こっているかを知るため、外部に発生する電磁波を詳細に調べた。その結果、矩形メサの場合、長辺方向への発振が強く、短辺方向へはほとんど発振しないこと、真上方向は強度が極大ではなく極小であること、高調波が3次まで観測されること、電磁波は強く1次元的に偏向しており、その方向はab面に垂直方向(c軸方向)であること、などの際だった特徴が明らかになった。この特徴は、磁束線の侵入を許す理論から推測される放射パターンとは異なり(真上で極大ではないことから)、一様なジョセフソン電流の振動が放射を作るモデルでむしろよく説明できる。この様な実験結果から、現象論的なモデルを作成して放射パターンの計算を行った。実験的には、メサの作成法をフォトリソグラフィーやFIB方などで作成し」その違いを調べた。50μWを超える強力なTHz波を観測することに成功した。応用のためには1皿Wが最低限必要レベルであるが、これは近い将来、このレベルを比較的容易に実現できることを示唆しており、大変応用上、有用であると考えられる。
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