研究概要 |
1.I型クラスレートSr_8Ga_<16>Si_<30-x>Ge_x単結晶の14面体中のゲストの振動とカゴの大きさの関係をラマン散乱と超音波分光によって調べた。Geの割合を増大するに伴って,14面体は異方的に歪み,ゲスト振動のエネルギーは温度の低下とともに著しく減少する。これはゲストの非中心回転運動を直接観測したものである。この非中心運度は,x=30のみで観測された弾性率C_<44>の顕著なソフト化の原因と考えられる。 2.Ba_8Ga_<16>Ge_<30>の熱伝導率はnタイプよりもpタイプが小さい。その原因をBa周辺の局所構造の違いにあると予想してEXAFS実験とラマン散乱を行った。EXAFS実験からは,電荷タイプに依らず14面体中のBa2原子は中心から0.15Aずれた位置にあるが,Ba2と最近接Ga/Geとの結合はBa1とGa/Geとの結合と同程度であることが示された。一方,ラマン散乱からは,Ba2原子の非中心振動がpタイプではより顕著であるだけでなく,カゴの6cサイトの振動モードにも明確な差異を観測した。 3.A_8Ga_<16>Ge_<30>(A=Ba,Sr,Eu)の内包原子とカゴのGa原子の電子状態を放射光X線光電子分光によって調べた。14面体中のゲストの電子状態はA=BaとA=Srでは異なり,しかもカゴのGaの配列も異なることが判明した。 この結果は,ケージのGa-Geの配列がゲスト原子に強く依存することを意味する。 4.I型Ba_8Ga_<16>Sn_<30>の熱伝導率はn型p型に拘わらず,同型のもののなかで最も低く,ガラスに似た温度依存性を示す。この原因を比熱測定とラマン散乱によって調べた。Baゲストの非調和振動の特性エネルギーとカゴの振動エネルギーは他のI型よりも著しく低いことが判った。ゲストの非中心サイト間の運動が音響フォノンを効果的に散乱し,低温での熱伝導率を抑制すると結論した。
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