研究概要 |
1. 希土類内包クラスレートEu_8Ga_<16>Ge_<30>がキュリー点T_c=36K以下のT^*=23Kで磁化と電気抵抗に異常を示すことを見出した。これはT_c直下での変調構造がT^*付近で一様な強磁性状態に変化することを示唆する。実際,中性子回折実験によって、特定の磁気散乱強度がT^*以下で急増することを確認した。一方、Eu_8Ga_<16>Ge_<30-y> Si_yではy=3.7においてT^*での異常は消失したので、変調構造は結晶構造の乱れに弱いことが判った。 2. Eu_8Ga_<16>Ge_<30>のTcとT^*の圧力変化を磁化率の測定から決定した。両者は2.1GPaまではほぼ同じ割合で上昇した。この結果はEu_8Ga_<16>Ge_<30-y> Si_yでは体積減少に伴いT_cが低下するのとは逆であるので、T_cを決めている主因はEu-Eu間の距離ではなく、伝導電子の密度や有効質量であると結論した。 3. I型Ba_8Ga_<16>Sn_<30>単結晶のラマン散乱によってBaの振動の対称性とエネルギーを調べた。Baはカゴ中心からずれた位置を特性エネルギー20Kで回転運動することを見出した。このエネルギーはガラス並みに低い熱伝導率を示すSr_8Ga_<16>Ge_<30>とEu_8Ga_<16>Ge_<30>よりも低い。 4. 超音波測定からゲスト原子が非中心運動するクラスレートに共通する低温ソフト化を発見した。このソフト化はゲスト原子の非中心振動に起因する格子不安定性または多重井戸間のトンネリングに起源をもつ。また,低温ソフト化に伴う体積弾性率のソフト化を発見した。 5. Ba_8Ga_<16>Sn_<30>の光電子分光実験の解析を進めた。キャリア制御により価電子帯はリジッドバンド的にシフトし,そのシフト量はI型で0.18eV, VIII型で0.29eVである。I型6dサイトを占めるBa原子の4d準位は2aサイトよりも0.76eV結合エネルギーが高く,理論値の0.81eVと一致する。
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