研究課題/領域番号 |
18204034
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
河野 公俊 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 主任研究員 (30153480)
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研究分担者 |
秋元 彦太 独立行政法人理化学研究所, 研究技術開発・支援チーム, 開発研究員 (60202545)
高橋 大輔 独立行政法人理化学研究所, 河野低温物理研究室, 基礎科学特別研究員 (80415215)
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キーワード | 超流動ヘリウム3 / 回転 / 量子渦 / テクスチャー / 境界条件 / ヘリウム表面上2次元電子 / 秩序パラメータ / 対称性の破れ |
研究概要 |
超流動^3He、特にA相と呼ばれる相では流れと秩序パラメータの関係を記述する方程式が波動関数の位相だけではなく、テクスチャーと呼ばれる特有の空間構造に依存し、かつエネルギーギャップが消失する点がフェルミ面上に存在するために散逸の効果が重要となるなど、流体力学的な性質には複雑で多様な要素が存在する。この特異な液体における流体現象には、まだ多くの未知の現象があるが、わずかな研究がなされているに過ぎない。本研究は、これまで困難であった、超流動^3Heの流れを超低温領域で実現し、回転により制御されたテクスチャーのもとで流体力学的な性質を調べることで、超流動^3Heと素粒子論との対応について研究する。 今年度は回転冷凍機を用いた量子渦に関する実験と、超流動ヘリウム3の表面近傍のテクスチャーについて実験結果の解析を行った。回転希釈冷凍機を用いた実験では、ヘリウム表面上2次元電子系の伝導度測定における回転効果を常流動ヘリウム3上でも測定し、従来、量子渦によるものであるという解釈がなされていたものが実は回転による液面の変位によるものであることを明らかにした。今後、量子渦からの効果を同定することが大きな課題である。また、素粒子論との対応の観点からは量子渦が存在する状況での表面波の実験が重要と考えられることから、その測定の準備も行う予定である。超流動ヘリウム3の表面テクスチャーの測定は200mKまでの超低温において、磁場を液面と平行に印加して行った。伝導度の詳しい解析からA相におけるエネルギーギャップのノード点の存在がまぎれのないものとして結論できることを明らかにした。B相の測定からは、磁場によって誘起された異方性が自由表面の存在による境界条件によって配向する現象をこれまでになく鮮明に観測することができ、理論との比較も厳密に行えることがわかった。
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