研究概要 |
本研究では,従来の二つの主要な地殻変動観測のスケール,すなわち横坑に設置された伸縮計による10m〜100mのスケールの観測,およびGPSによる10km〜100km基線での観測,の中間のスケール(数百m〜数km)の地殻変動を観測する手法を開発する。具体的には,2光波干渉計をべースに「量子標準」を測定基準としたシステムを開発する。その結果,高分解能と長期安定性をともに有する観測が可能となり,テクトニック変動をリアルタイム観測できる長期地殻変動観測手法の確立をめざす。 平成19年に能登半島や中越沖にて比較的規模の大きい地震(M7クラス)が起こった。従来の石英管伸縮計による観測では地震波の強震動の揺れの影響のため地震前後のひずみ変化を正確に求めることが難しい。一方,GPSでは震源近傍の大きい地殻変動の検知にかぎられる。レーザ伸縮計のデータを解析した結果,震源から数百km程度の神岡における観測でも10^-8〜10^-10程度の微小な地殻変動ひずみを検知できることが明らかとなった。地震波解析からもとめられた震源断層とこれら高精度な測地学的観測結果にもとづいた地殻構造に関する研究をすすめた。 2光波干渉計の開発については,産業技術総合研究所の光学トンネル内に基線長約80mのプロトタイプを組み立て,10^-8台の精度での観測ができる見込みが得られた。来年度前半に神岡に移設し,既存のレーザ伸縮計と並行観測を開始する。 名古屋大学犬山観測所では既存の10mレーザ伸縮計を移設して30mに延伸し,石英管伸縮計と並行させ,比較観測を開始する準備をすすめた。装置の固定方法の検討に時間を要し,計画よりも遅れ気味であるが,真空装置の設置はほぼ終了し,来年度前半には観測を開始する。
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