本研究は、主要な温室効果気体であるメタン(CH_4)の濃度およびそれに含まれる炭素および水素同位体の経年変動を明らかにし、最近のCH_4濃度増加率の大幅低下の原因解明と、今後のCH_4濃度変動の予測に資することができる知見を得ることを目的としている。今年度の研究概要は以下の通りである。 1. 広域観測の維持と拡大 CH_4濃度と同位体の地球規模変動を把握するため、前年に引き続き北極や南極でのグラブサンプリング法を用いた地上での大気観測をおこなうとともに、日本とオセアニアを結ぶ航空機や船舶などの機動力を利用した地球規模の観測を展開した。 2. データ解析と大気輸送モデルの改良 ・大気観測から得られたデータに対し、統一した基準のデータセレクションを行い、所定のフォーマットに従った濃度と同位体のデータセットを作成した。濃度および同位体についてのデータを解析し、広域にわたる時空間的変動の明らかにするとともに、それらの原因について検討した。 ・全球3次元大気輸送モデルの高解像度化を進めるとともに、地表におけるCH_4の発生源の種類や分布のデータベース作成を継続した。 3. 過去のCH_4濃度変動および同位体変動の再現とCH_4循環解析 ・南極の沿岸部(G15地点)およびやまと山脈の裸氷帯で掘削した氷床コアのメタン濃度およびそれに含まれる炭素および水素同位体を分析し、過去のメタン濃度変動の要因について考察した。 ・南極ドームふじ氷床コア分析を継続し、過去57万年にわたるCH_4濃度変動を明らかにした。 ・拡散モデルを用いたフィルン層の定量的研究を進めた。
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