| 研究概要 |
本研究計画初年度は,全地球史における様々な地質学的背景で形成された極限領域変成作用の精密な変成プロセスについて考察し,オロゲン(造山帯)深部における地質現象の明らかにするために,以下の項目を実施し着実な成果を得た.
1.本年度は,東南アジアおよび南極の極限領域変成岩類について,新たに導入した高分解能光学顕微鏡を使用して研磨薄片試料を再精査し,研究対象となる微細包有鉱物を新たに見出すとともに,元素マッピングを駆使して岩石組織との関連を解析した.
2.本科学研究費補助金により導入したラマン分光装置を駆使し,多種多様な極限領域変成岩の鉱物についてラマンスペクトルを収集し,九州大学ラマンスペクトルデータベースを一層整備した.それをもとに,ベトナム・レッドリバー勢断帯,南極・ナピア岩体の極限領域変成岩について,顕微ラマン分光分析装置を駆使して極微小領域での包有鉱物の相同定を行い,超高温変成岩中の藍閃石の存在を確認するなど,微細包有鉱物を形成した局所的変成反応の解析と変成履歴を再検討した.
3.ラマンスペクトル解析および鉱物の微小領域化学分析から,世界的に見てもこれまでに報告のないコランダム-ザクロ石-石英共生をもつ超高温変成岩の精密変成履歴解析を行い,光学顕微鏡やEPMAでは同定不可能な極微小な含水鉱物が関与する微小領域の反応履歴を明らかにした.
4.微小領域の局所的変成反応解析から,各地の高温・超高温変成岩についてより厳密な温度-圧力-時間経路(P-T-tpath)を明らかにした.その結果,さまざまな造山帯(オロゲンシステム)で起こった極限領域変成作用の真の変成過程が一層精密になった.今年度は国内関連研究も含め9編の原著論文を公表し.14件の学会講演を行った.
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