研究概要 |
本年度は、以下の2つのテーマを中心に研究を行った。 (1) 機能性分子のホストーゲスト相互作用の分子レベルでの解明 柔軟な構造を持つアミノ酸や機能成分子には多くのコンフォマーが存在し、他の(ゲスト)分子を包接する際や自己会合するときにコンフォマー特異性を示す。そこで、包接時におけるコンフォマー選択性や相互作用の特定する目的で、代表的な包接分子のカリックス[4]アレン(C4A)とベンゾ-18-クラウン-6-エーテル(B18C6)を用い,水分子をゲストとして包接構造やコンフォマー特異性について研究した。その結果,C4A-H_2O complexは水分子内包型構造が外接型に比べより安定で、主として双極子-双極子相互作用で結ばれていることが明らかになった。一方B18C6では、単体では4種類のコンフォマーが存在するが、水分子を包接すると1種類のコンフォマーのみに収束することを見出し、包接時にコンフォマー特性を示すことを実験的に示すことができた。 (2) 不揮発性分子のレーザー蒸発/質量分析システムの開発 昨年度から進めているレーザー蒸発と紫外および真空紫外光イオン化を組み合わせた不揮発性分子の質量分析装置のプロトタイプを製作した。グラファイトをマトリックスにしたフェニルアラニン、チロシンや、大きな分子量のカリックスアレンのペレットを作成しチャンネル型ノズルに装填した。試料ペレットを赤外レーザーで蒸発・気化し、引き続き紫外光および真空紫外光を照射・イオン化して質量スペクトルを観測することに成功した。今後いくつかの改良点が挙げられるが、装置の実用化への足がかりとなる結果を得た。
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