研究概要 |
開口プローブを用いた超高速近接場測定では,超短パルスがファイバーによる分散の効果を深刻に受け,パルス幅が大きく広がる。この効果を避けるため,本予算で購入したプログラマブル空間位相変調素子を用いた分散補償光学系を開発し,20fsを切る時間分解能の実現を目指した。分散補償光学系のハードウェアと最適化アルゴリズムの計算ソフトウェア,およびそれらのインターフェース部分の構築がほぼ完了した。実際の光学系でのパルス圧縮を試みているが,調整上の様々な問題点があり,まだ完成に至っていない。これが完成すれば,近接場における超高速測定への適用が可能となると考えている。 研究室に既存の近接場分光イメージング装置を用いて,様々な材質・形状の微粒子,及びそれらを配列したナノ構造体試料の作成と測定を進めている。同一試料の同一部位の電子顕微鏡像と近接場光学像を比較検討できる手法を前年度に確立したが,これを用いて球状金微粒子の単層膜状集合体について増強電場のイメージングを行った。島状の集合体において,その辺縁部や欠陥部位で電場の増強とラマン活性が顕著になることが明らかになった。その起源については現在考察中である。また,球状金微粒子を直鎖状に配列した試料についてのイメージングを進めている。電子ビームリソグラフィーで作成したディスク状の金のナノ構造体では,特異なプラズモンモードを示すことが近接場偏光測定で前年度に見いだされた。その起源を探るため,大きさの異なるディスクや,二つのディスクが近接した試料を作成し,測定を行った。また電磁気学理論による解析も進めており,これらの結果を総合して,特異なモードを示す理由が明らかとなりつつある。これらの成果は,微粒子系におけるプラズモンモードの挙動を考察するための基礎として,重要な意味を持つと考えている。
|