研究概要 |
開口プローブを用いた超高速近接場測定では,超短パルスがファイバーによる分散の効果を深刻に受け,パルス幅が大きく広がる。この効果を避けるため,本予算で購入したプログラマブル空間位相変調素子或いは現有の可変形鏡を用いた分散補償光学系を開し,20fsを切る時間分解能の実現を目指した。前年度までの結果を基礎として,実際の近接場光学系でのパルス圧縮を行い,近接場プローブ先端におけるパルス幅計測の結果,約23fsのパルス幅に相当する結果を得た。但し再現性とキャリブレーションに確認すべき点が残されている。また,近接場におけるパルス整形の基礎技術の開発を行った。 研究室に既存の近接場分光イメージング装置を用いて,様々な材質・形状の微粒子,及びそれらを配列したナノ構造体試料の作成と測定を進めている。電子ビームリソグラフィーで作成したディスク状の金のナノ構造体では,直径の異なるディスクの近接場光学像の観測結果に基づき,電磁気学計算を併用した解析を進め,2次元的なプラズモンモードの起源をほぼ明らかにした。金薄膜上に開けた円形開口(ヴォイド)の鎖状配列に関しては,ヴォイド間の空間に電場の増強が見られることを,近接場測定により見いだしていたが,その起源に関して,微粒子鎖状配列との比較において,電磁気学計算を併用して解析し,その起源を明らかにし,結果が光学の基本原理の一つであるバビネの原理と密接に関連することがわかった。またヴォイドの構造体で電場増強を起こすための条件に関して考察を加えた。これらの成果は,微粒子系におけるプラズモンモードの挙動を考察するための基礎として,重要な意味を持つと考えている。
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