研究課題
エネルギーの蓄積手段として、二酸化炭素還元反応を機能させるためには、錯体上でのCO_2の活性化のみならず、CO_2由来の金属・CO結合を金属-CH_2OHを経由してCH_3OHまで還元することが必要である。金属-CO結合を単純に2電子還元すると、COが発生するのみである。一方、金属-CO結合は還元力の強い無機ヒドリド試薬を用いると金属-CHOを経由した金属-CH_2OHに還元可能であるが、CO_2気流下では無機ヒドリド試薬はCO_2と反応してHCOOHを与える。さらに、現在、使用されている無機ヒドリド試薬は事実上、再生不可能であることから、化学エネルギー変換を目指した研究には適さないことは明らかである。申請者は再生可能な有機ヒドリド試薬の合成を目指して、2個のプロトン移動を伴って2電子の酸化還元反応が可能な2-(2-ジビリジル)-ベンゾ[b]-1,5-ナフチリジン(pbn)配位子を有する[Ru(bpy)_2(pbn)]^<2+>および[Ru(trpy)(pbn)X]^<2+>(bpy=ビビリジル;trpy=ターピリジル)を合成した。これらの金属錯体は、期待通り配位子の局在した2電子の酸化還元反応で(pbn+2e-+2H^+〓pbnHH)、電気化学的に再生可能な新規有機ヒドリド配位子を持つ[Ru(bpy)_2(pbnHH)]^<2+>,[Ru(trpy)(pbnHH)X]^<n+>を与えた。また、[Ru(bpy)_2(pbn)]^<2+>を可視光で励起した錯体、[Ru(bpy)_2(pbn)]^<2+*>は適当な犠牲試薬の存在下では、極めて容易に1電子還元を受け、引き続いたナフチリジン骨格の5位の窒素へのプロトンにより、pbnH骨格を持つラジカル錯体[Ru(bpy)_2(pbnH)]^<2+>が生成した後に、不均化反応で2電子還元体が生成することを明らかにした(2[Ru(bpy)_2(pbnH)]^<2+>→[Ru(bpy)_2(pbnHH)]^<2+>+[Ru(bpy)_2(pbn)]^<2+>)。この結果、1光子の光吸収で2電子還元反応が効率良く進行させることが可能となった。
すべて 2007 2006 その他
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (1件)
Journal of American Chemical Society 129
ページ: 2-3
Bulletin of the Chemical Society of Japan 79
ページ: 1535-1540
ページ: 745-747
Inorganic Chemistry 45
ページ: 8887-8894
ページ: 2873-85
Angewandte Chemie International Edition (In Press)