1.スカンジウム触媒による1-ヘキセンとノルボルネンまたはジシクロペンタジエンとの共重合 我々はスカンジウムジアルキルハーフメタロセン錯体(C_5Me_4SiMe_3)Sc(CH_2SiMe_3)_2(THF)と[Ph_3C][B(C_6F_5)_4]との反応から発生させたカチオン性アルキル活性種が、スチレンとエチレンの立体特異性シンジオタクチック共重合やエチレンとジシクロペンタジエンとスチレンとの三元共重合などのユニークな反応性を示すことを報告した。しかしながらこの触媒系では、環状オレフィンとα-オレフィンとの共重合反応は進行せずこれは配位能が高いTHFの存在が原因であると考えられた。 そこで本年度はこれらの問題を解決すべく新たな希土類触媒の開発を行った。スカンジウムトリスベンジル錯体Sc(CH_2C_6H_4NMe_2)_3に1当量のC_5Me_4H(SiMe_3)を反応させると、対応するTHFフリーのスカンジウムビスアルキル錯体(C_5Me_4SiMe_3)Sc(CH_2C_6H_4NMe_2)_2が得られた。この錯体と[Ph_3C][B(C_6F_5)_4]との反応で得られたカチオン性活性種は1-ヘキセンと環状オレフィンであるノルボルネンとの共重合に対して高い活性を示した。この共重合反応はこれまでジルコノセン触媒を用いた1例のみが報告されていたが、この場合、共重合体中の1-ヘキセンの割合は最高で36%までしか入れることができなかった。一方、本触媒系は26-75%と幅広く1-ヘキセンの組成率を変えることが出来る初めての例である。また本触媒系は1-ヘキセンとジシクロペンタジエンの共重合にも高い活性を示す初めての触媒であることが明らかとなった。さらに触媒活性種であるTHFフリーのカチオン性アルキル錯体の単離およびX線構造解析にも成功した。
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