本年度は以下の項目について検討を行った。 1.粒子分離 電場スイッチングを用いる新しい粒子マニピュレーション法を開発し、これを分子レベルまで適用できるよう検討を行った。拡散や電場による流れの影響を防ぐためにアガロースゲルを用いて蛍光性色素や蛍光ラベルしたタンパク質への適用を確認した。また、超音波ではイオン交換樹脂粒子におけるイオン交換反応の進行により粒子の凝集挙動が時間変化することを確認し、これを用いた動的な評価ができるよう実験系の最適化を行った。また、英国Southampton大学の理論系研究者との共同研究により系の設計が大幅を改善することに成功した。 2.高速分離による不安的化学種の分離と速度論的評価 蛍光顕微鏡下でハイドロダイナミッククロマトグラフィー(HDC)を行い、ポリスチレンスルホン酸に結合したローダミンの解離を追跡できるような系の設計を行い、2つの可能性を見出した。一つはHDCの特性を利用した安定混合による反応追跡であり、ストップトフロー同様の反応解析法となり得る。他の一つはHDCのピーク形状解析であり、数値解析によって速度論的パラメータの算出について検討を行った。また、この研究を通じてPSS-ローダミン系は極めて特徴的な溶液挙動をすることを見出したのでスペクトルの多変量解析による解析を行う予定である。 3.高濃度高分子溶液でのイオンの溶媒和 ポリエチレングリコール(PEG)の濃厚水溶液中でのカリウムイオンや臭化物イオンの構造と溶媒和エネルギーの関係を解明した。特に後者ではPEG分子の水和圏内への進入を定量的に解析することに成功した。また、ポリスチレンスルホン酸、アルブミン等の濃厚高分子溶液中におけるイオンの溶媒和エネルギーと構造解析から、第二水和圏の水和エネルギーが概ね10-15kJ/molであることを明らかにした。
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