アルキンのカルボメタル化反応は多置換オレフィン合成のもっとも有効な手法である。しかしながら、ホモプロパルギルエーテルのようなヘテロ原子を有するアルキンのカルボメタル化反応と比べて、官能基化されていないアルキンのカルボメタル化反応の例は限られている。そこで我々はコバルト触媒を用いたアルキンのアリール亜鉛化反応について検討を行った。 触媒量の臭化コバルト存在下、6-ドデシンにヨウ化フェニル亜鉛塩化リチウム錯体をアセトニトリル溶媒中で作用させたところ、6-フェニル-6-ドデセンがよい収率でE体選択的に得られた。また官能基をもたない単純なアルキンに加えて、リンのようなヘテロ元素を有するアルキンも基質として用いることができる。反応系中で生じているアルケニル亜鉛中間体は臭化アリルやヨウ素をはじめとする各種求電子剤で捕捉可能である。さらに本反応を利用して、合成エストロゲンmeso-Hexestrolの合成にも成功した。 また、コバルト触媒を用いて2-ビニルピリジンへのスチリルボロン酸の付加反応が進行することを見つけた。本反応では2-ビニルピリジンの他に2-ビニルピリミジンなどの複素芳香環を置換基として有する活性アルケンを用いることができた。ボロン酸としてアリール基上にさまざまな置換基を有するスチリルボロン酸やスチリルトリフルオロボレートを用いても反応が進行することが明らかになった。本反応はアルケニルコバルトを生じるトランスメタル化とそれに続くアルケンの挿入、最後にプロトノリシスを経て進行する。
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