研究概要 |
初年度に当たる今年度は、硫黄資源の有効利用技術の開発を目的として、新規硫黄含有物質(モノマー、ポリマー)の合成を主として検討した。一つは硫黄含有の新規モノマーの開発である。硫黄含有ポリマー合成のために、高耐熱性、高溶解性、高屈折率、低複屈折を実現する骨格である9,9-ジアリールフルオレン構造を持つ新規ジチオールモノマーを合成した。フルオレンの2,3-位並びに6,7-位にベンゼン環を縮環させ、9位にふたつの4-N,N-ジメチルアミノチオカルバモイルフェニル基または4-メルカプトフェニル基をもつジチオール型のモノマーは、すでに合成法が確立されている方法で合成した2,3;6,7-ジベンゾフルオレノンをフェノールと反応させることで、カルボニル炭素上に二つのフェノール構造を導入した。常法によりフェノール系水酸基をチオカルバモイル基に変換した。このモノマーといくつかのジハロアレーンとの重縮合反応により、対応するポリチオエーテルを合成した。いずれも収率は定量的で、分子量数万のわずかに黄色のポリマーが得られた。これらのポリマーは、250〜320℃のガラス転位温度、また510〜560℃の10%重量減少温度を示し、耐熱性に優れたポリマーであることがわかった。また、各種有機溶媒に対しては高い溶解性を示し、ナフタレン骨格を有するにも拘わらず、カルド構造として知られる9,9-ジアリールフルオレンと同様の溶解特性を有することがわかった。これに先立ち実施した9,9-ビス(4-メルカプトフェニル)フルオレン並びに9,9-ビス(4-N.N-ジメチルアミノチオカルバモイルフェニル)フルオレンを用いるポリチオエーテルケトン類の合成とその特性解析でも、高い耐熱性と溶解性、屈折率などが明らかとなった。
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