研究課題
原子価異性錯体とは、レドックス活性な配位子に2つ以上の酸化状態を取りうる遷移金属イオンを配位させた錯体で、電荷の局在分布により2つの縮退した電子状態を示すものである。このそれぞれの電子的な異性状態は異なる光学的、電気的、磁気的性質を示すことから、近年分子デバイスへの応用が期待され注目を集めている。本年度は、二核コバルト錯体が合成条件の違いで二つの異なる構造をとることを見出し、それらの錯体の磁気特性および光応答性の比較を行った。得られた二種類の錯体は[{Co(tpa)}_2(dhbq)](PF_6)_3と[{Co(tpa)}_2(dhbq)](PF_6)_3・2H_2Oである。錯体[{Co(tpa)}_2(dhbq)](PF_6)_3は室温付近でヒステリシスを示した。また、光照射(波長532nm)によりCo^<III-LS>-DHBQ^<3->-Co^<III-LS>→Co^<III-LS>-DHBQ^<2->-Co^<II-HS>で示される電荷移動が誘起された。また、光照射後、温度をゆっくりと上げていくと約50K付近で磁化の値がもとの値にもどり、この温度で光誘起準安定状態から最安定状態へと緩和することが分かった。一方、[{Co(tpa)}_2(dhbq)](PF_6)_3・2H_2Oは室温付近でのヒステリシスは観測されず、広い温度範囲で原子価異性相転移を示すことがわかった。また、低温で光照射を行うと[{Co(tpa)}_2(dhbq)](PF_6)_3と同様光応答性を示し、50K付近で緩和することがわかった。これらの分子はいずれも電子移動とスピン転移が結合した新規光応答性物質である。
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