研究課題
鉄-マンガン多核錯体を基盤材料として、光(電場)応答性と単分子磁石の特性を併せ持つ新物質の開発を試みた。その結果以前見出した鉄-マンガン多核錯体の誘導体で車輪型構造を有する十二核鉄-マンガン錯体の開発に成功した。結晶構造解析から、十二核錯体が一次元的に配列しチューブ状構造をとっている事が分かった。これらの物質の交流磁化率を測定したところ周波数依存を示すことを見出した。すなわち新たに合成した錯体は単分子磁石であることが明らかとなった。また、これらの物質の光応答性を検討したところ、可視光、紫外光のいずれに対しても光応答を示さないことを見出した。これはプルシアンブルーで類似体で光応答が見出されている鉄(II)マンガン(III)錯体と価数が異なり、鉄とマンガンがともに三価であるためであると考えられる。そこで鉄(II)-マンガン(III)の価数を有する新物質の合成を試みた。しかし、残念ながら単結晶の合成に至らなかった。そこで光応答性を示す物質を探索し、その物質に単分子磁石としての特性を加えることを新たな戦略として物質の探索を行った。その結果、銅とモリブデンからなる三核錯体、六核錯体、一次元錯体等を開発することに成功し、これらの錯体が光応答性を示すことを見出した。すなわち、紫外光照射により金属-金属間電子移動が誘起され準安定状態が保持されることが分かった。また、銅とモリブデン間の強磁性的相互作用により光誘起磁気効果を示すことが分かった。
すべて 2007
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Inorg. Chem. 46
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