光照射により磁性、金属のスピン状態の可逆なスイッチングが可能な固体物質の開発が盛んである。そのための新たな設計指針の一つとして、これまで「分子集合体を利用した光磁性制御」を提示し、いくつかの光スイッチング可能なシステムを創製してきた。2004年には、酸化鉄磁性体ナノ微粒子の表面をアゾ化合物で修飾することによって、室温にてその磁性を可逆に光スイッチングすることに成功した。これは、室温にて磁性の光制御に成功しているものの、ナノサイズの微粒子は超常磁性であり、強磁性での光スイッチングが求められていた。 そこで本研究では、強磁性体の磁化を光制御するための新しいシステムとして、FePtナノ微粒子をアゾベンゼンなどのフォトクロミック分子にて表面修飾を行うことにより、その目的を達成することを目指し、実際に光磁性制御に成功した。特に、その磁性制御のメカニズムとして、磁性体界面における磁性発現や、修飾分子との相互作用について詳細に検討した。表面鉄原子、白金原子に直接配位するフォトクロミック分子を設計した場合の磁性制御の比較検討、また、メスバウアー分光などによる光照射前後の電子状態の直接観測などにより、表面光応答性分子は表面鉄原子の電子状態に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
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