「高機能をもつ光制御型強磁性体の創製」として、界面光制御に着目した新しい光磁性制御システムである「金表面に発現する強磁性を利用した室温磁性材料化」に着目した。具体的に、チオール末端をもつアゾ化合物を設計、合成し、金ナノ粒子の表面に修飾を行ったところ、粒径5nmの粒子では反磁性を示すが、粒径1.7nmの粒子では表面の露出度が大きいため室温強磁性を示した。さらにこのアゾベンゼン修飾金ナノ粒子は、室温強磁性にてその磁性を光制御することに成功した。 これは全く新しい光磁性制御の考え方を提供するが、このメカニズムを理解することが、「界面磁性の光制御」という新しい概念を一般化することにつながり、大きな展開が期待される。そこで、ここではこのようなAu-S強磁性のシステムにおける、さまざまな物性の基礎評価を行った。例えば、磁性の起源を直接確かめるためにXMCD(X線磁気円二色性)による測定を行い、Auの5dバンドに生成するホールが磁性の起源であることを突き止めた。さらにケルビンプローブ測定によりAuの仕事関数を直接測定することができ、光照射に伴う変化も観測することに成功した。 さらに、「磁場アシスト交互積層法」を利用したFePtナノ粒子-アゾベンゼン高分子の交互積層膜を作製することにより、巨大保磁力をもち垂直磁気異方性も兼ね備えた室温光応答強磁性システムを構築することにも成功した。
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