本研究の全体的な構想は、生体高分子の代表の一つであるタンパク質表面を任意にかつ特異的に認識し、それをデザインした通りに化学変換できる新しい有機化学の創成および、それを基盤的な方法論とした細胞系という複雑・混合システムでの精密有機・生命化学の新しい研究領域を開拓することである。 本年度は特に(1)認識素子となる人工レセプター分子の開発、(2)水中/温和な条件での化学変換を可能とする有機反応の探索において成果が得られた。(1)に関しては、オリゴアスパラギン酸ペプチドフラグメントを高い選択性と親和性で認識できるDpaTyr/Zn錯体を発見し、これを蛍光化したプローブが細胞表層の受容体タンパク質の配位化学的なラベリングを可能とする事を実証した。また(2)に関しては、カルボヒドラジンとオキシムアミンの熱力学的安定性の差を利用して、タンパク質表面でのOne-pot連続反応が起こる事を見いだし、新しいバイオセンサー構築に成功した。
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