初年度は、高効率充放電が可能な光二次電池の開発をめざした。電荷蓄積電極部分には導電性高分子の他、さまざまな二次電池材料を検討した。今回採用した三極式セルでは、光アノードから供給されうる電子数が対極での酸化還元反応速度を超え電流値が対極で制限される場合や、電流出力をせずに光照射を行なった場合に、電荷蓄積電極に電子が流れ光充電が行われる。例えば電荷蓄積電極にホールドープした導電性高分子を用いた場合には、電子は脱ドープによって蓄積される。一方、負荷をかけた場合には通常の色素増感太陽電池と同様の光電流電圧曲線が得られる。したがって高効率充放電を達成するには色素増感太陽電池部分の高効率化が不可欠である。 本研究では、まず光アノードにFTO上に焼結した酸化チタンナノ粒子に各種の色素を吸着した電極を用いるが、さらなる高効率化を目指し近赤外領域に強い吸収を持つ有機色素の開発を行った。これまで高効率の電子移動を実現できる色素はカルボン酸基のついたルテニウム系色素だけであり、重金属を使わない高効率色素の開発が望まれている。そこで、ポルフィリン二量体やドナーアクセプター分子系の利用も試みた。 次に、光エネルギー貯蔵型色素増感太陽電池の電荷蓄積電極部分の大容量化と高効率化を検討した。また、光充電のさらなる高速化なども検討した。なかでも電荷蓄積電極の基板構造を変更することでその特性を著しく向上させることに成功した。また、基板構造を含むセル全体の構造について検討を加え、充放電サイクルについては充放電を100サイクルにわたり行っても、放電電気量に低下が起こらない材料を開発した。
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