研究概要 |
太陽エネルギーを直接電気に変換する太陽電池は,自然エネルギー利用の中でも最も実用的なエネルギー生産システムといえる。しかしながら,既存のシリコン系太陽電池は生産コストがかかりすぎる上,シリコン資源の制約もあり,これに代わる低コストで高性能な次世代太陽電池の開発が緊急の課題となっている。こうした中,「色素増感太陽電池」が発表され,次世代太陽電池として期待されるようになった。しかしながら太陽電池には本質的に光強度に依存する出力変動があり,色素増感太陽電池ではその変動が一層大きいことが指摘されている。さらに,エネルギー変換効率が低いため,その高効率化の研究とともに出力安定化対策が必要になっている。われわれは,こうした問題点を解決するため,太陽電池と蓄電池を一体化した「光二次電池」の開発を行った。具体的には,湿式太陽電池の一つである色素増感太陽電池の主要な過程が光エネルギーの化学エネルギーへの変換反応であるという点に着目し太陽電池そのものに蓄電池の機能(エネルギー貯蔵機能)を付与する方法を考え,導電性高分子電極を組み合わせることで充放電が可能な光エネルギー貯蔵型色素増感太陽電池を開発した。太陽電池と蓄電池を一体化したものでは,エネルギー変換効率が低い欠点を蓄電によって補うことができる。本研究では,これまでの研究で得られた基礎的な知見を発展させ,(1)高効率充放電が可能な光二次電池の開発,(2)光量子収率の高い光二次電池の開発,(3)全固体化を目指した有機太陽電池を用いた光二次電池システムの開発,の以上3項目の研究を進めている。本年度は,光量子収率の高い光二次電池の開発を行った。この研究では,色素増感太陽電池に用いる新規ドナーアクセプター色素の合成,色素増感太陽電池部分の近赤外光利用効率のIPCE測定装置での検討,色素の光励起状態のピコ秒時間分解分光の3項目を行った。また,全固体化を目指した有機太陽電池を用いた光二次電池システムの開発の一つとして電子輸送層への導電性高分子の利用を行った。
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