研究概要 |
エピタキシャルヘテロ接合界面を利用した新たなイオニクスデバイスの創出を目標とし、本年度はエピタキシャル薄膜電極を用いて固液ならびに固固界面の電気化学挙動を検出、解析した。主要な電極材料である層状岩塩型、スピネル型、オリビン型について、パルスレーザー堆積(PLD)法を用いることで配向制御した二次元界面を有するエピタキシャル薄膜を作製した.大型放射光施設SPring-8においてin situ X線散乱測定を適用し、電池反応中の固液界面構造変化を明らかにした.電極界面は電極内部と異なり,反応中に劇的に結晶構造が変化することを初めて明らかにした。この知見は,電極最表面構造が電池反応の全体の可逆性や速度を決定する鍵のひとつであることを示しており,より詳細に機構を解析することで次世代電池開発の新しい道筋を切り開くことが期待出来る。固固のエピタキシャルヘテロ接合界面を作製し、配向、膜厚による、イオン導電性の差を明らかにした。今後は固固界面を積層することにより,新規イオニクスデバイス開発の指針を見出す。さらに、既存デバイスのなかで究極の安全性を有する全固体電池の実用化を目指し、セルの最適化、固固界面反応機構を検討した。申請者が発見した電解質(チオリシコン)について、電極との間に自己組織化界面により固体・固体接合が形成され、大電流充放電が可能になることを明らかにした。また容量は高いが電気伝導性、耐久性に難のあった硫黄正極を気相法でアセチレンブラック上に作製することで、正極界面での接合性を向上させ理論容量動作を初めて実現した。これにより、全固体電池用電極材料の選択の幅を広げ、さらなる高機能化への道筋を示した。結晶構造に関しては、合成条件の検討によりいくつかの多形材料の合成に成功し,低温相の構造解析に成功した。これらの結晶構造とリチウムイオンの導電機構との相関を明らかにし、高イオン導電性を示す材料設計指針を見出す基盤を築いた。
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