研究課題/領域番号 |
18206002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川上 養一 京都大学, 工学研究科, 教授 (30214604)
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研究分担者 |
船戸 充 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70240827)
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キーワード | 近接場分光 / フォトルミネッセンス / 発光ダイナミクス / 先進フォトセンシング / 窒化物半導体 / 量子ナノ構造 / 局在発光制御 / バイオセンシング |
研究概要 |
本年度は、近接場光学顕微鏡(SNOM)を用いて青色発光InGaN量子井戸のフォトルミネッセンスの詳細なマッピングを行った。発光強度が強い領域では、発光ピークエネルギーが低エネルギー側にある傾向が強く、局在中心からの発光を示している。一方、発光強度が弱く、非発光再結合中心が多いと予想される領域では、発光は高エネルギー側に位置しているが、これらの境界領域では二つの発光ピークに分離していることが見出された。これらのことから、非発光再結合中心の周りで組成変調が生じてそれがポテンシャル障壁として働き、非発光再結合中心への捕獲が抑制されていること、そしてそれが高効率発光の有力な機構となっていることが明らかにされた。一方、緑色発光InGaN量子井戸では、このようなanti-localization効果は見られず、局在中心と非発光中心のリンクが観測されており、高効率発光を実現する際の障害となっている。今後は、InリッチInGaNナノ構造のポテンシャル揺らぎの人為制御の可能性を探るとともに、非極性基板上に作製した構造において、早い輻射再結合寿命(面内拡散の抑制)の構造を実現して、SNOM分光による評価を加えていく必要があるものと考えている。また、今年度はファイバープローブに入射させた円偏光を近接場励起光とし、直線偏光子を回転させて試料からの変調発光信号をロックイン測定することで、偏光異方性のナノマッピングに成功した。この手法は、光スピントロニクスでも有用な評価ツールとなるであろう。さらに、高屈折率透明セラミックス材料を用いた表面プラズモンセンサーを試作した。この技術は、将来の近接場バイオセンシングにも適用可能であると考え、現在検討を進めている。
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