研究概要 |
本研究は、次世代の時間分解電子顕微鏡を念頭にパルス電子源となりうる超高強度極短パルスレーザー生成パルス電子の特性(レーザー強度依存性、ターゲット材料依存性、ターゲット構造依存性)を明らかにし、これらの電子源を従来型の電子顕微鏡の電子源と加速管に換え、パルス電子顕微鏡を実現し、時間分解能力を有する電子顕微鏡を実証することを目的とする。高強度短パルスレーザー生成プラズマから発せられる様々な放射線は短パルス、点源、高輝度といった特徴を有し次世代の放射線源として注目されている。電子線発生装置の場合、現在の装置では必要なエネルギーを得るには加速器を付加しなければならない。一方、レーザープラズマ電子線の場合はレーザー強度を十分高くできれば加速器を必要としないので装置小型化の可能性がある。レーザープラズマ電子線の電子線回折への応用を議論する場合、100keV〜1MeV程度のエネルギーの電子線量のレーザー集光条件やターゲット材料への依存性を知る必要がある。平成18年度はこれらの依存性を調べるためにレーザーによる電子線発生実験を実施した。ターゲット材料に低、中、高Z値(陽子数)の原子として、タンタル(Z=73)、モリブデン(Z=42)、アルミニウム(Z=13)を用いた。厚さ10,50,200μmのターゲット表面に高強度フェムト秒レーザー(波長800nm,パルス幅130fs,ピーク出力0.2〜0.8TW)を集光照射(F=3.3,集光径10μm,強度10^<17>〜10^<18>W/cm^2)した。発生する電子の量とエネルギースペクトルを自作の磁場型エネルギー分析器を用いて調べた。得られた電子のエネルギースペクトルはボルツマン分布を示している。10μm厚のモリブデンの電子温度と量のレーザー強度依存性はκT_e∝I^<0.5>, A∝I^<0.3>となった。電子量はZ値よりも、厚さへの依存性が強く、薄いターゲットの方が多くの電子を放出することがわかった。
|