19年度は、テラヘルツ波パラメトリック発生器を新たに構築し、高速波長可変性など性能確認を行った。また、チェレンコフ型位相整合方式を導入し高出力化、および広帯域化を図った。他方、2波長可変光源を用いる差周波光混合により、川瀬らは世界で始めて有機DAST結晶を用いてテラヘルツ波発生が可能であることを過去に示したが、最近さらに2〜30THzのきわめて広い周波数可変性が得られることが判明した。このような超広帯域光源を波長走査型テラヘルツ波OCTに導入し、分解能を向上させることを試みた。さらに、より高効率にテラヘルツ波を発生可能な非線形光学結晶を探索するとともに、励起2波長光源に光注入を施すことにより、発生するテラヘルツ波の狭線化を図った。 一方、世界最短パルス幅を発生するフェムト秒ファイバーレーザーを用いて、超短パルステラヘルツ電磁波発生を行った。レーザーパルス強度の増大、1.5μm帯で効率のよい光スイッチの製作、超短フェムト秒パルスに対応した光スイッチの設計と試作、などを検討した。重要な課題としては、10fs程度のレーザーパルスで光導電性スイッチを励起した場合に、光キャリアそのものが見えてくるため、発生するテラヘルツ電磁波をきれいなモノサイクルにすることが難しいことが予想された。この課題に対しては、共同研究先であるキャノン(株)が光スイッチの設計、試作に関するノウハウを有しているため、連携研究開発により解決を図った。超短テラヘルツ波パルスの発生を実験的に確認した後、Time of Flight方式のトモグラフィー実験系を構築した。具体的には汎用のテラヘルツ時間領域分光システムと同様の実験系を構築し、反射時間波形から奥行分解能を検証した。
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