20年度は、励起光源としてパルス圧縮を施した小型で堅牢なファイバレーザを用い、超短パルスを生成することで、実用的かつ高分解能なテラヘルツトモグラフィシステムの開発に成功した。そして、このシステムを用いて新たな応用分野の開拓を進めた。特に、産業分野からニーズの高いマルチレイヤーの自動車塗装膜の断層像取得に世界で初めて成功するなど、応用可能性の評価及び検討を行った。我々が開発した17 fsという超短パルスを出力するファイバレーザを励起光源とすることで190 psのパルス幅を持つテラヘルツ波を発生させることに成功し、さらに20年度は奥行き分解能4.5 μmを得ることができ、現段階で世界で最も優れた奥行き分解能を持つシステムの開発に成功した。 また、産業分野における応用として、2層、4層の多層構造を持つ半導体デバイスの断層情報取得を試みた。半導体デバイスはその性能上複雑な多層構造を持っており、層の厚さは数μm-数10 μmという薄さである。各層の厚さにムラや、内部構造に破損などの欠陥が生じることによって性能に影響を及ぼしてしまう可能性がある。断層情報を正確に取得することができれば半導体デバイスの性能保障、不具合の原因追及などに繋がると言えるのでテラヘルツトモグラフィを用いることができないか可能性評価を行った。結果として2・mまでの層の2次元画像化に成功した。また、サンプル表面の形状や状態の違いもテラヘルツトモグラフィによって検出可能であることが確認できた。これらのことから多層構造半導体デバイスにおけるテラヘルツトモグラフィの有用性は十分にあると確認できた。
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