研究概要 |
本研究の目的は,代表者らが発見したフェムト秒(fs)レーザーパルスによる固体表面のナノ構造生成現象を解明し,伝搬光による初めてのナノ物質制御の基礎を確立することである。当該年度には,世界に先駆けて構築した近接場(局所場)及びプ表面ラズモン・ポラリトン(SPP)励起によるナノ周期構造生成の物理過程を検証すると共に,同ナノ構造生成手法を物性の異なる物質に適用できるように高度化するための研究を行った。 1) ナノ構造生成の超高速ダイナミクスを光サイクルレベルで解明し,表面制御の新手法を開発するため,パルス幅8fsの発振器をベースにした高強度なレーザーの開発を行った。 2) 直線と円偏光fsパルスを用いてナノ周期構造の初期成長過程を調べ,以下の過程を解明した。すなわち,(1)標的の結合構造転移により表面に微細な突起が生成し,その表面で近接場が発生する。(2)入射光電場は近接場によって増強され,nm域でアブレーションが誘起される。(3)生成したナノレベルの凹凸によって入射パルスとSPPとの結合が生じ,周期的な増強電場によるアブレーションが周期構造を形成する。モデルはナノ構造生成の特性を説明すると共に,計算した周期サイズも観測結果と良く一致する。 3) モデルによれば,標的への入射角の変化によってナノ周期構造の表面形状を制御できる。入射角を変化させた実験により,ナノ表面角度を60°まで傾斜制御できることを実証した。 4) ナノ構造生成モデルを物性の異なる半導体に適用するため,Si基板について実験を行った。その結果,ナノ構造生成を担う主要な物理過程は同じであるが,競合過程による制約が加わることを明らかにした。 以上により,世界初のレーザーによるナノ物質制御の基礎を開発した。今後,任意物質に適用できるようモデルと手法を高度化し,具体的な素子・デバイス製作のための手法を開発する。
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