本研究は臨床応用へ向かうことを最大目標に設定して研究を開始した。2次元、3次元、擬似3次元(トモシンセシス)の開発に成功した。これにより放射光を用いた屈折型X線画像による診断の道具を全て取り揃えることができた。さらに臨床へ向かうためには乳癌試料の大きさを大きくし、その延長上で切除標本全体が撮影できるX線光学系およびX線検出器を作成する必要がある。これに向かって今年度は平成18年度購入の34mm×40mmの大きさの視野をもつCCDカメラを用いて代表的な乳癌試料について2次元X線暗視野像(XDFI)撮影を試みた。XDFIにより悪性病変のみならず良性病変や正常構造である乳管・小葉も描画され、しかも良性病変と悪性病変の画像を区別することができることが分かった。ここで良性病変は腺症、良性葉状腫瘍、嚢胞、乳管内乳頭腫であり、悪性病変は非浸潤性乳管癌、浸潤性乳管癌である。本研究では屈折X線画像と病理組織標本像との対応を調べるため、病理標本作成で使われたパラフィンブロック包埋組織を加工せずXDFI撮影した。これにより同じパラフィンブロックから作成された通常のヘマトキシリン・エオジン染色薄切標本像(厚み:5ミクロン)およびヘマトキシリン単染色標本像(厚み:2〜4ミリ)とXDFI像との直接比較できた。これによりXDFI像を用いて乳癌診断ができる可能性が出てきた。さらには臨床展開が可能となったと考えられる。
|