今年度は、ナノ材料として半導体超微粒子を含有した材料のシンチレーション特性評価を行った。具体的には、CsClにPbを0.1mol%ドープした結晶である。当該結晶の熱処理により、Pbが凝集した形態の半導体超微粒子を析出させ、その微粒子を発光中心として利用したシンチレータ材料の作製を行った。その結果、超微粒子は非常に高速な発光中心として機能することが実証された。一方、本手法によっては、単離したPbイオンが凝集体と共存し、単離イオンからの長寿命発光成分が除去しきれないという欠点も明らかとなった。また、発光強度についても、実用レベルには達しておらず、今後の改良が必要となる。特に、超微粒子を担持するマトリクスやドープ濃度などを最適化することにより、更なる性能向上が可能であると考えられる。 また、ナノ材料を包含する透明マトリクスの候補物質である、ガラス-ポリマー複合体について、ゾルゲル法による作製を試みた。特に、熱中性子検出用シンチレータをターゲットとし、ホウ素含有ゾルゲルガラスを用いた。蛍光体としては、予備的な実験のため、既存のプラスチックシンチレータと同様の有機分子を用いた。その結果、発光量、応答速度とも、既存のプラスチックシンチレータとほぼ同等の材料の開発に成功した。組成の最適化などにより、今後、さらなる性能向上が見込まれる。
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