今年度は、半導体量子井戸構造および半導体超微粒子を有する、ナノ材料シンチレータの高度化、および選択的放射線検出に向けたマトリクス開発を行った。 半導体量子井戸構造を有する物質においては、光学的には不活性であると考えられる絶縁体層の違いにより、そのシンチレーション特性が大幅に異なることが見出された。また、もっとも高性能な物質については、X線検出用シンチレータとして非常に有望であることが明らかとなった。絶縁体層の違いによるシンチレーション特性の相違については、単結晶の結晶性が関与しているものと考えられる。また、半導体超微粒子を用いたシンチレータ材料については、超微粒子濃度がその特性を大きく左右することが明らかとなった。さらに、超微粒子シンチレータにおける発光過程を解明し、それぞれの過程の、シンチレーション特性への影響についての知見が得られた。 さらに、選択的放射線検出に向けたマトリクス開発においては、ゾルゲル法により、熱中性子検出用のホウ素含有ガラスと、ポリスチレンなどのポリマーとの有機無機ハイブリッド材料の開発に成功した。有機発光分子を用いたシンチレータ材料の形成により、無機マトリクスのみと比較し、有機物とのハイブリッド化による効果が明確に実証された。また、数種類のポリマーとホウケイ酸ガラスとのハイブリッドマトリクスの形成に成功した。
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