研究概要 |
1)分子膜ナノ凹凸の形成メカニズムの解明 i)実験的手法: 磁気ディスク用のDLC膜に関して,PFPE系の3種の潤滑膜(UV官能型,極性型,無極性型)について,UV照射/非照射の条件における潤滑膜の段差境界流動の比較,および潤滑膜表面のUV照射/非照射境界部におけるUV照射流動の比較により,UV照射の効果を評価した.UV官能型ではUV照射流動が生じて突起が形成されること,極性型ではわずかにUV照射流動による突起が観測されること,無極性型では段差境界流動特性から潤滑剤分子の層状配列化が示唆されるがUV照射流動は観測されないこと,などを明らかにした.またシリコン基板に関して,UV照射を利用する2種類の方法(潤滑膜を塗布後にUVを照射,UV照射後に潤滑膜を塗布)を提案した.膜厚分布の経時変化を測定することによって,いずれの方法もテクスチャの形成には有効であることを確認した. ii)分子シミュレーション ビーズに作用する力に基づく力学的な重みによって決定するスマートモンテカルロ法を採用し,分子膜の分布を再現することに成功した.本手法を用いて固体表面の濡れ性を評価し,初期膜厚が薄い場合には畝状ナノ構造領域で分子膜が破断し,厚い場合には固体基板を一様に被覆すること,また畝状ナノ構造の高さの増加とともに,固体表面の濡れ性が低下することを見出した. 2)超高感度のフリクションテスタの開発 ディスクの回転機構として,空気軸受支持の超低速ダイレクト・リニアドライブモータを,またピンの加重機構として,変位拡大機構付きピエゾアクチュエータを採用したトライボテスタを開発した.凝着力の測定には,拡大機構付きのPZTアクチュエータを,また摩擦力の測定には起歪体の歪を利用し,いずれもnm精度で変位を測定する新方式を採用し,凝着力・摩擦力ともに5μNの分解能を実現した.
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