研究概要 |
1)分子膜ナノ凹凸の形成メカニズムの解明i)パターン形成条件の最適化:マスクのUV遮蔽用Cr膜からの透過光の影響を排除するため,膜厚を105nmから145nmに厚くした特別仕様のマスクを作成し,照射時間をパラメータにして,表面エネルギー,固定分子層厚,段差境界流動,UV照射境界流動,段差高さなどを測定し,UV照射時間の最適値を確定した.また,代表的なPFPE Fomblin3種の潤滑剤(極性AM,極性Zdol,非極性Z)について,UV照射効果は,AMが最も大きく,またZdolにも有効であること,Zでは凹凸形成効果はないが段差境界流動特性には影響すること,などを明らかにした.ii)分子シミュレーション:直鎖状潤滑剤分子の主鎖を,エーテル結合(C-O-C)部で分断して1つのビーズとし,ビーズ相互をばねで結合した粗視化モデルを用いて,シミュレーションプログラムを開発した.固定分子と流動分子の比率を調整するパラメータとして,極性基と固体分子との相互作用ポテンシャルを用いて,凹凸パターンの形成過程の再現に成功した.2)ナノ凹凸付き潤滑膜の減耗修復特性の評価厚さ2nmの実用レベルのAM潤滑膜において,ピンオンディスク方式の摺動実験を行い,減耗修復特性を測定した.減耗量はUV照射により約40%減少すること,またUV照射ありでは,照射なしとほぼ同じ時定数で修復することを確認した.代表的な二つの凹凸パターン(平行パターンと直交パターン)およびUV全面照射(パターンなし)について,摺動減耗試験を行い,パターンの有無および異方性の効果を測定した.減耗量については,パターン付き≒パターンなしであり,修復特性については,直交パターン≒パターンなし>平行パターンの関係があることを明らかにした.これにより,パターンによって減耗修復特性が調整可能であることを実証した.
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