研究概要 |
本研究の目的は、超高密度磁気ディスク装置用のヘッド機構実現を目指して、5nm程度の超微小すきまで相対すべり運動する記録ヘッドの動的挙動を、ミクロ/ナノメータ領域における分子気体および分子液体による力学作用を考慮して詳細に解析しうるシミュレーション技術および物性評価の高精度技術を開発し、これによりヘッド形状設計のための指針を得ることである。このため、分子レベルからマクロレベルにわたって、着目するスケールに応じた最適な解析手法を選択・駆使し、その結果を融合することにより(マルチスケール手法)、分子レベルのレオロジーからマクロレベルのスライダ動特性までを包括する解析手法の確立を目指した。 平成20年度の研究成果を以下に示す。 1.液体超薄膜の変形特性解析:液体超薄膜の変形特性を、液体界面の変形を支配する長波方程式の3次元非線形時間発展問題として数値的に解く手法をほぼ確立した。これにより、表面張力や分子間力に空間不均一がある場合に生ずる液膜の過渡的変形の解析を可能にした。さらに、回転円板上の液膜に圧力・せん断応力が繰り返し働く場合の微小液膜変形の周期解析を可能にした。 2.将来型記録ディスクとして有望な、走行方向・トラック方向に磁気的な干渉防止用の溝があり、これにより浮動ヘッドスライダの空気膜圧力およびファンデルワールス引力に不均一がある場合のナノメータ浮上スライダの静的浮上特性および動的挙動を、研究代表者・研究分担者が確立した分子気体潤滑方程式と多層膜の分子間力の理論式を用いて解析する手法を概ね確立した。 3.固体基板上のナノ薄膜の例としてLB膜(ステアリン酸,アラキジン酸)およびPFPE膜(フォンブリンZ-dol,Z03)を対象に、膜厚に対する表面エネルギーの実験結果と、表面エネルギーの分散成分を多層膜系のファンデルワールス圧力から理論的に求めた結果を比較して、理論の妥当性を示した。
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