研究分担者 |
高木 周 独立行政法人理化学研究所, 和光研究所, チームリーダー (30272371)
葭仲 潔 東京大学, 大学院・工学系研究科, 講師 (90358341)
森安 史典 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (80191055)
梅村 晋一郎 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (20402787)
姫野 龍太郎 独立行政法人理化学研究所, 情報基盤センター, センター長 (60342838)
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研究概要 |
マイクロバブルの濃度と発熱作用の関係について調べた.媒質を脱気水とし,焦点位置の10mm立方の領域にさまざまな濃度のマイクロバブルを含んだ空気飽和水を注入して30秒間超音波を照射した.マイクロバブルには超音波診断用の微小気泡造影剤であるLevovist【○!R】(平均径1.3・m)を用いた.熱電対を用いて焦点領域の温度を測定し,発熱作用の解析を行うとともに,高速度カメラを用いて焦点付近で起こる現象を撮影した. 焦点領域の温度については,どの超音波強度においてもボイド率(マイクロバブル濃度)が大きいほど温度上昇も大きくなるという結果となった.高速度カメラの画像については,キャビテーション気泡が発生していると思われる黒い点が10-5,10-4のときに観察され,ボイド率が大きくなるにつれて音源側に近づき,キャビテーション気泡も激しく生じることが分かった.これは,マイクロバブルの濃度が高いと超音波のエネルギーが焦点よりも手前で反射・散乱され,焦点手前での圧力振幅が大きくなりキャビテーションが発生しやすくなるためであると考えられる. 生体組織におけるマイクロバブルの加熱凝固作用について明らかにするために,ラットの肝臓を対象とした超音波照射実験を行った. 超音波照射後の肝臓の断面写真から各ボイド率で加熱凝固した形状が異なることが分かった.ボイド率が大きいほど肝臓表面近くのマイクロバブルが超音波エネルギーを吸収してしまうために,肝臓の奥までエネルギーが届かなくなったことによるものと考えられる. 以上から,ボイド率が大きいほど加熱効果は大きいものの,加熱される領域が音源側に近づくために必ずしも治療効果が大きくなるわけではないということが言え,むしろ加熱領域のコントロールが難しくなるという問題が生じてしまうことが分かった.
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